訳者と一緒に学ぶ「ドメイン駆動設計をはじめよう」セミナー開催報告

2024年10月31日夜、「訳者と一緒に学ぶ『ドメイン駆動設計をはじめよう』セミナー」をオンラインにて開催いたしました。

増田 享 氏
増田 享 氏
原田 巌 氏
原田 巌 氏

本セミナーは、ドメイン駆動設計(DDD)に興味を持つ方や実践を始めている方、また『ドメイン駆動設計をはじめよう』の読者を対象に、訳者である増田 亨氏をお迎えし、DDDの考え方をより深く掘り下げることを目的として、当協議会のモデリング実践部会(主査:原田 巌)が企画・実施したものです。関係者含め67名の方にご参加いただきました。

はじめに、原田 巌氏より、UMTPおよびモデリング実践部会の紹介、UMTP試験の案内、モデリングフォーラム2024の紹介がありました。また、アイスブレイクとして「訳語クイズ」を実施し、参加者の皆様に楽しんでいただきました(図1)。

図1 訳語クイズ
図1 訳語クイズ

参加者には、増田氏からの事前質問にも回答していただきました。参加者の一定数はエヴァンス本の内容を知っており、業務ロジックをDDDで実装しようとした経験もあることが示されました。

続いて、増田氏による講演「『ドメイン駆動設計をはじめよう』本の読み解き方」が行われました。講演では、資料に基づき、「この本のドメインモデリング4つの特徴」に沿って詳しく解説いただきました(図2)。

図 2 講演資料より
図 2 講演資料より

翻訳にまつわる苦労話インタビューでは、UMTP会長羽生田 栄一氏から「本書はDDDのラノベ本」との発言を皮切りに、従来書とは一風異なる、日本語を用いた訳語(同じ言葉、イベント履歴式ドメインモデル、互いに独立など)について「もっと過激な訳語案も出た」といった裏話を伺い、従来書を手にしていない多くの方に読んでもらいたいとエールを受けました。著者に、事例等を日本の状況に合わせて差し替える旨打診したら快諾され、他国語版の訳者はそこまで取り組んでないと、日本語版の翻訳活動を絶賛されたとのことです。

推しトークでは、「本書の輪講会で、これまでモデリング中心のアプローチに理解をしてくれなかった上司をまきこみ、DDDに取り組む意義を理解してもらえた」という感想がよせられました。


さらに、本書4章の演習問題を参加者全員でシール形式で取り組み、一見簡単そうに見える問題の正解者が0だった(正解をあらかじめ知っているスタッフを除いて)という衝撃的な結果もあり、このような演習問題は著者の深い考えに基づいており、各章の理解のゲートとして活用できると評価しました。

まとめのパネルディスカッションでは、イベントストーミングがモデリングだけでなく認識合わせや同じ言葉の導出、新加入メンバーの育成など多様な目的で軽く実施できること、本書エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計 Eric Evans 著、今関 剛 監訳 2011.はオンラインセミナー資料が基になっているため、受講者からのフィードバックを受け、理解しやすくなっていることがしめされました。また、2024/11/28に開催予定のモデリングフォーラムワークショップではイベントストーミングの講演を数多く行っている成瀬 允宣氏によるオンサイト指導が受けられるため、関心のある方はぜひ参加いただきたいと呼びかけました。

MF2024ワークショップ②『Event Stormingワークショップ』(2024.11.28)詳細及びお申し込みはこちら

最後の質問コーナーでは以下のやり取りがありました:

Q. DDDチームの人数は?
A. 2,3人~10人未満(アジャイルチームに準ずる)

Q. 業務領域の変化(中核/補完/一般)をどう検知する?
A. 変更要求の出方が変わる。例:一般や補完に頻繁に変更要求が発生するなら、その業務領域は中核になったのではないか。

Q. 本書内の訳者コメントがカラスのアイコンになっているのは?
A. O’Reillyの標準。翻訳者が選んだわけではない。

Q. 資料を職場で展開してよいか?
A. 歓迎します!

UMTPでは本セミナーの成果を踏まえ、今後もDDDを含むモデリング技術の普及・展開と実践の機会の提供を継続していく予定です。今回参加できなかった皆様も、次回は是非ご参加いただき、モデリング技術をさらに高めていただければ幸いです。 講演資料は、以下のリンクからご覧いただけます:

Speaker Deck 『ドメイン駆動設計をはじめよう』本の読み解き方』

最後に、本セミナーにご参加いただいた皆様、ご登壇いただいた増田様、そして開催にあたりご協力いただいた関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

2024年11月 UMTPモデリング実践部会