➀お二人のオブジェクト指向にかける思い

オブジェクト指向のリ・オリエンテーション 

UMTP会長 羽生田栄一氏
UMTP会長 羽生田栄一氏

羽生田:
「オブジェクト指向のリ・オリエンテーション」というテーマで、3月24日のオブジェクト指向カンファレンスにて基調講演を行いました。この講演で伝えたかったのは、2つのポイントです。
オブジェクト指向が登場してからすでに20〜30年が経ち、習得している人にとっては当たり前の概念となっている一方で、若い世代がIT業界に入る際に、きちんと学ぶ環境が整っていないこと。
中堅層のエンジニアの中には「オブジェクト指向だけで設計・実装するのは時代にそぐわなくなってきているのでは?」と疑問を抱く人が増えていること。
こうした状況を踏まえ、現時点でのオブジェクト指向の捉え方を整理し、方向性を示す必要があると考えました。基調講演という位置付けでもあり、入門的なオリエンテーションを行いつつ、今の時代に即した形で見直しを加えるという意味で、「リ・オリエンテーション」と名付けました。

設計駆動開発の重要性 かける思い

有限会社システム設計代表 増田 亨氏
有限会社システム設計代表 増田 亨氏

増田:
羽生田さんがおっしゃったように、最近の若いエンジニアの中には、設計やモデリングをほとんど経験せずに仕事をしている人が多いと感じます。我々は自然にこうした概念に触れてきましたが、今はそうではない。これは非常にもったいないことです。設計を学ぶだけで、より良い仕事が早くできるようになるはずなので、私は「設計駆動開発」というテーマで講演を行いました。内容としては、モジュール化や関心の分離といった基本的な概念を中心に話しました。ある意味では、これもリ・オリエンテーションやリバイバルのような試みと言えます。実は当日、羽生田さんの講演を直接拝聴できなかったのですが、資料を読んで大変刺激を受けました。もっと若い世代のエンジニアにもこの内容に関心を持ってもらいたいと感じました。そこで、羽生田さんと直接話す機会があればと思い、お話しする場をお願いした結果、この対談が実現しました。

モデリングに対する誤解  

羽生田
懇親会の際に30分ほどお話しする機会がありましたね。その中で、オブジェクト指向やモデリングに対する誤解があることが話題になりました。「この誤解をどう解消すべきか?」という点について議論する場が欲しいと感じていたので、今回の対談はその延長線上にある良い機会だと捉えています。