第7回UMTPモデリング技術セミナーとワークショップの実施報告

第7回目となる今回のセミナーは、4+1Viewというソフトウェアアーキテクチャの設計視点と、RUP(Rational Unified Process)というUMLベースの開発プロセスのを開発責任者として有名なPhilippe Kruchten氏を講師に招き、ソフトウェアアーキテクチャについて講演いただきました。

セミナーでは、最初にアーキテクチャとナレッジマネジメントに対する従来からの定義とともに講師の考えを紹介いただいた後、今回の主題であるアーキテクチャ上の知識の重要性について解説がありました。
講師によると、アーキテクチャ上の知識はアーキテクチャ設計と設計判断からなります。これをAK=AD+DD、(Architectural Knowledge=Architecture Design+Design Decision)と表現しました。

  • AD:アーキテクチャ設計は構造(と振る舞い)だけでなく多くの「〜性(〜ities)」を具体化・解決するものであること、及び、その表現方法として、従来からの「箱と矢印できれいな絵を書く方法(Boxology)」の限界や、その代替・補完手段としてビュー定義やメタファー/ブレンドなどの考え方について紹介がありました。
  • DD:設計判断については、その背景に、判断を行った根拠(Rationale)や文脈(Context)があるため、これが記されていないと、単純にアーキテクチャ設計の結果を知識として活用することができない、という点を強調されました。設計判断を蓄積・管理するためのいくつかの手法やツール紹介もありましたが、まだこれらは研究段階、とのことです。

 

Kruchten氏からこのセミナーで解説されたソフトウェアアーキテクチャに対する考察は、実際のソフトウェア開発の状況を考えると、とても納得できる内容です。しかし、それを抽象化された設計論として議論する時に忘れがちなポイントでもあります。

セミナー時間は予定よりもオーバーしましたが、参加者にとってとても有意義な内容でした。講師のKruchten先生、そしてセミナーを盛り上げてくれた参加者の皆様、どうもありがとうございました。

 

第7回UMTPモデリング技術セミナー『ソフトウェアアーキテクチャの知識の作成と管理』実施報告

 

日時: 2009年12月11日(金) 13:30〜15:30
場所: オージス総研 東京オフィス 8F Georgia
講師: University of British Columbia 教授 Philippe Kruchten氏
参加者: 36名
概要:  ソフトウェアアーキテクチャは、ソフトウェアが多用されているシステムに対して早期に下す大きな設計判断を表すものである。逆に、これらの設計判断がソフトウェアの開発、配置、発展を大きく決める。アーキテクチャ上のよい設計判断を下すことは、ソフトウェアエンジニアリングの大きな課題であり、開発しようとしているシステムが複雑だったり、ヘテロジニアスだったり、開発チームが分散したりするとさらに難しくなる。組織がアーキテクチャに関する知識を捉え、資産化し、移転できるようになれば、効率や品質を大きく向上させることができる。本講演では、アーキテクチャ知識の管理のための概念的な枠組みを紹介するということに挑み、ソフトウェアアーキテクトがアーキテクチャ上の判断を熟慮して導き出すのに必要な膨大な知識を管理するためのプラクティス、手法、ツールについて述べる。本講演の2つの重要なポイントは、1)アーキテクチャ記述言語(ADL)。特にADLと考え、使うことができるUMLやその子孫であるSysMLを取り上げる。2)ソフトウェアアーキテクチャパターン。ソフトウェアアーキテクチャパターンは、ソフトウェアアーキテクチャに関する我々の知識を集めたものである。また、ソフトウェアアーキテクチャパターンをUMLで表現する利点についても述べる。
資料: 『ソフトウェアアーキテクチャの知識の作成と管理』
(89slides pdf形式 2.23MB)
セミナーの様子:
第7回モデリング技術セミナーの様子

第7回UMTPモデリング技術ワークショップ実施報告

日時: 2009年12月11日(金) 15:40〜17:40
場所: オージス総研 東京オフィス 8F Georgia
座長: 株式会社オージス総研 ソフトウェア工学センター長 藤井拓氏
参加者: 10名、
Philippe Kruchten氏(University of British Columbia)、藤井拓氏(オージス総研)、猪股順二氏(富士通)、河合昭男氏(オブジェクトデザイン研究所)、竹政昭利氏(オージス総研)、中佐藤麻記子氏(テクノロジックアート)、中原俊政氏(バブ日立ソフト)、羽生田栄一(豆蔵)、山城明宏氏(東芝ソリューション)、越智典子氏(技術翻訳)
概要: ・講演内容に関する確認
(1) 知識マネジメントの戦略-集約vsパーソナリゼーション
(2) アーキテクチャ上の知識としてのソースコードについて
(3) アーキテクチャを表すためのUMLと4+1Viewについて
(4) 非機能要件を表すためのモデリングアプローチについて
(5) 要求とアーキテクチャの境界について
(6) アーキテクチャの寿命と進化について
(7) アーキテクチャの審美性について
・講師とモデリング
– モデルとは何か
– モデリングに目覚めたきっかけ
– 現状のモデリング技術の問題点
・プロセスとモデリング
– 要求のモデリング
・モデリング原論
– 4+1ビュー
・モデリング教育
・モデリングの体系化
・今後のモデリング
・参考文献
資料: 議論詳細(第7回UMTPモデリング技術ワークショップ誌上公開のページにリンク)
ワークショップの様子:
第7回モデリングワークショップの様子

ワークショップの終了後、講師を囲んで撮ったスナップショットです。

第6回モデリング技術ワークショップ

向かって左から順番に、
後列:山城、中原、中佐藤、竹政、河合、猪股、
前列:藤井、Kruchten、羽生田 (敬称略)