第5回UMTPモデリング技術技術セミナーとワークショップの実施報告

昨年行われた4回に渡るモデリング技術セミナーでは、毎回その終了時に、参加いただいた聴講者の方々にアンケートを行ってきました。
このアンケートにおいて、「モデリング技術の適用分野として考えていきたい分野」としてもっとも関心が高かったテーマが、「ビジネスモデリング・要求定義モデリング」の分野です。
そこで、2009年度は今回と次回に渡って、この両テーマを取り上げることとしました。
本セミナーは、この前半のビジネスモデリングを扱っています。

2009年度に入って初回となる第5回UMTPモデリング技術セミナーは、日揮情報システムの明庭聡様を迎え、「SOAを成功に導くためのビジネスプロセスモデリング」について講演いただきました。
明庭様は、ビジネスプロセスモデリングの分野で国内第一人者として活躍され、また、今年度はUMTPのBPMN研究会主査も担当されています。
今回の講演は、もともと講師が1日掛けて行う研修内容を、モデリング技術者向けに、そのポイントを1時間半に圧縮した内容であり、大変に密度の濃いものとなりました。

一見すると取っ掛かりが容易に見える業務フロー図ですが、講師は、取っ掛かりがいい分、人によってモデルの出来には大きな差が生まれてしまう、という警鐘を鳴らします。
講師のアプローチは、対象領域のプロセスタイプを明らかにするとともに、目的やそのモデルを利用してコミュニケーションすべき相手に応じて、そのレベルや粒度を書き分けるべきである、という主張に基づく分析手順の活用です。

目的を達成するための必要十分な表記要素を定義して、その目的に対してはどのレベルにおいても厳密な表現・粒度でなければならないという講師の主張と、この考え方に基づいてセミナーで紹介される数々の事例は、とても分かりやすく感じました。

疎結合、疎粒度、サービスオーケストレーション、XML SchemaとWSDLの関係、ハンドオフレベル・マイルストーンレベル・プロシジャーレベルというビジネスプロセスの3つの記述レベル、そして、As-IsとTo-Beを表現するための記述的モデリングと実行可能モデリングの書き分け、ベンダーとお客様の役割分担等、ここではとても書きけれないため、個々の説明は割愛しますが、ぜひ今回の資料や議事を参照いただければ、と思います。

セミナ後の講師とモデリング技術部会メンバのワークショップにおいても、その大半は、明庭様がセミナーでご紹介した内容の質疑応答から始まる議論に費やされ、モデリング技術部会メンバにとっても、今回の講演内容が大変に興味深い内容であったことがわかります。
ワークショップの議事は、過去のワークショップ同様、誌上公開していますので、セミナーに参加された聴講者の方々にとっては、別掲の議事録は当日の講演を補完する内容としても活用いただけることを期待します。

UMTPのBPMN研究会の活動成果として、「ローレベルBPMNパターン」のガイドラインを2005年に公開しています。
今回のセミナーの最後には、同研究会の第二弾の成果物として、「BPMNモデリングガイドライン」の作成に取り組んでいるとのアナウンスがありました。
ビジネスプロセスモデリングの実践的なtipsやモデリング基準などをまとめています。
本セミナーに参加された方、およびワークショップの誌上公開に興味を持たれた方には、ぜひ合わせてご活用いただきたく、よろしくお願いします。

最後に、講師の明庭様、そしてセミナーを盛り上げてくれた参加者の皆様、どうもありがとうございました。

 

第5回UMTPモデリング技術セミナー『SOAを成功に導くためのビジネスプロセスモデリング』実施報告

日時: 2009年7月17日(金) 13:30〜15:00
場所: 日立インフォメーションアカデミー 大森ベルポートD館 506研修室
講師: 日揮情報システム株式会社 シニアコンサルタント 明庭聡氏
参加者: 37名
概要:  ビジネス プロセスモデリングという道具1つで、SOA推進、J-SOX文書化、IT導入のRFP策定、業務改善など、様々な分野でコンサルティングをしてきましたが、なぜ、そのように幅広い分野で有償のサービスを提供できるのか。”SOAを成功に導く”というテーマを焦点に、プロセス表記の国際標準「BPMN」の特徴やモデリングの進め方を解説しながら、その理由を紹介したいと思います。
資料: 『SOAを成功に導くためのビジネス プロセス モデリング』 (51slides pdf形式 1.35MB)
セミナーの様子:
第5回モデリング技術セミナーの様子

第5回UMTPモデリング技術ワークショップ実施報告

日時: 2009年7月17日(金) 15:10〜17:30
場所: 日立インフォメーションアカデミー 大森ベルポートD館 506研修室
座長: バブ日立ソフト株式会社 QA・生産技術部 部長 中原俊政氏
参加者: 9名、
明庭聡氏(日揮情報システム)、河合昭男氏(オブジェクトデザイン研究所)、竹政昭利氏(オージス総研)、
中原俊政氏(バブ日立ソフト)、水戸一幸氏(日本ユニシス)、山城明宏氏(東芝ソリューション)、
山本修作氏(バブ日立ソフト)、吉田裕之氏(富士通)、越智典子氏(技術翻訳)
概要: ・イントロダクション
・講演内容に関する確認
(1) ビジネスモデリングの5つの視点について
(2) ビジネスプロセスとデータや組織との関係について
(3) ビジネスレベルとITレベルのモデリングについて
(4) 記述の厳密性とAs-Is/To-Beモデルの位置づけについて
(5) モデリングにおけるIS部門の役割について
(6) モデリングの目的の共有とプロセスの規模について
(7) ユースケースとビジネスプロセスモデリングについて
(8) 5W2Hのモデリングポイントについて
(9) トップダウン型とボトムアップ型のアプローチの融合について
・講師とモデリング
・モデリング原論
・さまざまな技術とモデリングの関係
・モデリングを普及させるには
・今後のモデリング
・参考文献
資料: 議論詳細(第5回UMTPモデリング技術ワークショップ誌上公開のページにリンク)
ワークショップの様子:
第5回モデリングワークショップの様子

ワークショップの終了後、講師を囲んで撮ったスナップショットです。

第5回モデリング技術ワークショップ

後列、向かって左から順番に、山本、小林、水戸、吉田、竹政、
前列、向かって左から順番に、中原、明庭、山城、河合。(敬称略)