第2回UMTPモデリング技術セミナーとワークショップの実施報告

第2回UMTPモデリング技術セミナーは、講師であるメタボリックスの山田正樹氏から参加者への問いかけではじまり
ました。
「あなたの作ったモデルは何を対象にしていますか?」「あなたの作ったモデルは最終製品のどこに存在していますか?」と。
講師は、「現状の多くのモデルは、9割方、機能を対象に作っているし、また問題領域の分析結果や設計の判断を記述
した分析・設計モデル(の一部)は、最終製品のソフトウェア自体から欠落している」と指摘します。続いて、もし「ソフトウェアを動く知識、としてとらえることができれば」、と切り出します。
「動く知識」とは、「(本来は)モデルとして表現される様々な問題領域の特性や設計判断の可能性を内包し、かつ実行可能なもの」という意味合いです。講演タイトルの様相とは、モデルが表現する問題領域の特性などを布の色や質感に例えた表現ですが、様々な様相の生
地を重ねたり、折り曲げたり、つまみあげるように、「動く知識(=ソフトウェア)」を加工できれば、それは「今実装されている特定の機能を実行するためだ
けのもの」ではなく、「そこから様々な情報を引き出したり、そこに新たな機能を追加することがずっと容易なもの」になるのではないか、と提案します。講師は、以前、UMLエディタIIOSSの状態遷移図デバッグ用シミュレータを開発されており、また最近ではGrailsによるアプリケーションを開発し
ています(注)。それらの経験を通して、「モデルは実行可能であり、またソフトウェアに問題領域のコンテキストを反映させることも可能だ」といいます。講師が熱く語る「動く知識としてのソフトウェア」という考え方には説得力があり、セミナーに集まったモデラーを志す45人の参加者にとって、モデルの新し
い可能性について考える機会を与えてくれました。(注):「実践的UML入門—IIOSSで始める新世紀プログラミング」(ASCII出版)と「Grails徹底
入門」(翔泳社)は共に講師の著書(共著書)。

セミナーに続いて行われたワークショップでは、約1時間ほど講師のセミナー講演内容の議論が継続し、その後「モデリング」に対して様々な側面から、講師と
モデリング技術部会のメンバとの間で活発な議論が行われました。

第2回の企画は、前回とは異なる切り口でモデリングを議論することができ、大変有意義なものとなりました。講師の山田様、そしてセミナーを盛り上げてくれ
た参加者の皆様、どうもありがとうございました。

 

第2回UMTPモデリング技術セミナー「−ソフトウェアにおける機能から様相へ−」実施報告

 

日時: 2008年9月11日(木) 13:30〜15:00
場所: オージス総研 東京オフィス 8F Georgia
講師: 有限会社メタボリックス 代表取締役 山田正樹 氏
参加者: 45名
概要: ソフトウェアは今、大きな転換点にあると思われます。この講演ではその転換を機能を中心としたソフ
トウェア開発から様相を中心とした実行可能な知識記述への転換と捉え、そこで広い意味でのモデリングが果たす (べき) 役割を検討します。
資料: 「ソフトウェアにおける機能から様相へ」(配布 プレゼンテーション) (12pages pdf形式 680KB)
セミナーの様子:

第2回モデリング技術セミナーの様子

第2回UMTPモデリング技術ワークショップ実施報告

日時: 2008年9月11日(木) 15:10〜18:15
場所: オージス総研 東京オフィス 8F Georgia
座長: 株式会社オージス総研 エグゼクティブコンサルタント 竹政昭利 氏
参加者: 13名、
山田正樹氏(メタボリックス)、 猪股順二氏(富士通)、 河合昭男氏(オブジェクトデザイン研究所)、
竹政昭利氏(オージス総研)、照井康真氏(テクノロジックアート)、 中原俊政氏(バブ日立ソフト)、 羽生田栄一氏(豆蔵)、
藤井 拓氏(オージス総研)、
水戸一幸氏(日本ユニシス)、 山下智也氏(テクノロジックアート)、 山城明宏氏(東芝ソリューション)、
吉田裕之氏(富士通)、越智典子氏(技術翻訳)
概要: ・ワークショップの趣旨と講師の自己紹介
・講演内容についての質疑
・講師とモデリング
・モデリング原論
・プロセスとモデリング
・モデリングを普及させるための教育
・今後のモデリング
・参考文献
資料: 議論詳細(第2回UMTPモデリング技術ワークショップ誌上公開のページにリンク)
ワークショップの様子:

第2回モデリング技術ワークショップの様子

ワークショップの終了後、講師を囲んで撮ったスナップショットです。
第2回モデリング技術ワークショップ

向かって左から順番に、
河合、猪股、水戸、藤井、竹政、吉田、山田、照井、羽生田、山城、山下、中原、越智。(敬称略)