2年間実施したモデリング技術セミナーの最終回となる今回のセミナーは、「組込みUML(eUML)」と「思考系UMLモデリング即効エクササイズ(モデ力)」の著者として有名な、渡辺博之氏と芳村美紀氏を講師に招き、組込みのモデリングについて講演いただきました。
セミナーは、まず最初に、講師の問題提起から始まりました。講師によると、組込みソフトとは「物理現象や自然現象を相手に、人が容易にできないことを装置を使って実現するもの」です。そのため、「現場の試行錯誤の中から構築される要素技術主導で開発」され、その結果、「動いたものが『仕様』であり、『モデル』は必然的に結果を表現したもの」になってしまいがちである、ということです。
講師は、ここで参加者に問いかけます。「このモデルで本当にいいのか?」「何かが足りない!」と。
続いて、講師は「動かすだけのモデル」を3つのタイプに分類します。自動販売機の例を取り上げ、機能で分解したモデル、物理構成で分解したモデル、制御動作で分解したモデルについて、それぞれの課題を指摘しました。では、どうすればよいのか?講師の解答は、モデルを目的・手段で階層化してはどうか?という提案でした。
一通りの説明の後、今度は講師から「1つのサンプル問題を参加者の皆さんでモデリングしてみよう」というチャレンジが与えられました。
問題は、
このセミナーの講演資料
とともに、
UMLモデリング技能認定試験L3モデリング問題の例題にも掲載されているので、ぜひ、この報告を今読まれている皆さんも一緒に考えてみてください。
演習とその解説の後、講師から、モデラーが身につけたい2つのスキルの説明がありました。
- 問題を俯瞰的に捉えられるスキル
- 論理的に分割・整理することができるスキル
講師は、参加者に対して最後に「これらのスキルは一朝一夕にで身に着くものではなく、意識して繰り返し、継続することが大事です」述べてセミナーを締めくくりました。
実習もとり入れ、同じ問題を参加者が共に考えながら、講師の提示する複数のモデルの利点・欠点を考えていく熱気あふれるセミナーで、とても有意義な内容でした。講師の渡辺氏、芳村氏、そしてセミナーを盛り上げてくれた参加者の皆様、どうもありがとうございました。
この後に続くワークショップでは、現状のモデリング技術の問題点として、UML自体が複雑になりすぎてしまったことや、クラスとインスタンスを分けて考える、という思考の難しさ、更にモデリングのさまざまな作法について議論がありました。また分析モデルと設計モデルの役割分担や、SysML・MATLAB Simulinkによるモデルベースのシミュレーションや実行についても議論が及びました。ワークショップの内容の詳細は、議論詳細をご覧ください。