第8回UMTPモデリング技術技術セミナーとワークショップの実施報告

2年間実施したモデリング技術セミナーの最終回となる今回のセミナーは、「組込みUML(eUML)」と「思考系UMLモデリング即効エクササイズ(モデ力)」の著者として有名な、渡辺博之氏と芳村美紀氏を講師に招き、組込みのモデリングについて講演いただきました。

セミナーは、まず最初に、講師の問題提起から始まりました。講師によると、組込みソフトとは「物理現象や自然現象を相手に、人が容易にできないことを装置を使って実現するもの」です。そのため、「現場の試行錯誤の中から構築される要素技術主導で開発」され、その結果、「動いたものが『仕様』であり、『モデル』は必然的に結果を表現したもの」になってしまいがちである、ということです。
講師は、ここで参加者に問いかけます。「このモデルで本当にいいのか?」「何かが足りない!」と。

続いて、講師は「動かすだけのモデル」を3つのタイプに分類します。自動販売機の例を取り上げ、機能で分解したモデル、物理構成で分解したモデル、制御動作で分解したモデルについて、それぞれの課題を指摘しました。では、どうすればよいのか?講師の解答は、モデルを目的・手段で階層化してはどうか?という提案でした。

一通りの説明の後、今度は講師から「1つのサンプル問題を参加者の皆さんでモデリングしてみよう」というチャレンジが与えられました。
問題は、
このセミナーの講演資料
とともに、
UMLモデリング技能認定試験L3モデリング問題の例題にも掲載されているので、ぜひ、この報告を今読まれている皆さんも一緒に考えてみてください。

演習とその解説の後、講師から、モデラーが身につけたい2つのスキルの説明がありました。

  • 問題を俯瞰的に捉えられるスキル
  • 論理的に分割・整理することができるスキル

講師は、参加者に対して最後に「これらのスキルは一朝一夕にで身に着くものではなく、意識して繰り返し、継続することが大事です」述べてセミナーを締めくくりました。

実習もとり入れ、同じ問題を参加者が共に考えながら、講師の提示する複数のモデルの利点・欠点を考えていく熱気あふれるセミナーで、とても有意義な内容でした。講師の渡辺氏、芳村氏、そしてセミナーを盛り上げてくれた参加者の皆様、どうもありがとうございました。

この後に続くワークショップでは、現状のモデリング技術の問題点として、UML自体が複雑になりすぎてしまったことや、クラスとインスタンスを分けて考える、という思考の難しさ、更にモデリングのさまざまな作法について議論がありました。また分析モデルと設計モデルの役割分担や、SysML・MATLAB Simulinkによるモデルベースのシミュレーションや実行についても議論が及びました。ワークショップの内容の詳細は、議論詳細をご覧ください。

第8回UMTPモデリング技術セミナー『組込みで’使える’UMLモデルとは』実施報告

日時: 2010年2月5日(金) 13:30〜15:20
場所: 株式会社豆蔵 新宿三井ビルディング34F 会議室
講師: 株式会社エクスモーション 専務取締役 渡辺博之氏
株式会社エクスモーション 常務取締役 芳村美紀氏
参加者: 39名
概要:  組込みソフトウェアの開発は、グローバル化や競争の激化に伴い、大規模化・複雑化・短納期化が進んでおり、開発の難しさは増す一方です。その中で、UMLモデリングによる開発は徐々に導入が進みつつありますが、前述した問題を解決するには至っていません。単にコードを可視化しただけのモデルや、従来の手続き型のモデルなどにとどまってしまい、期待した「高品質」「再利用性」といったメリットを享受できず、途中で断念してしまうケースも多いようです。
本セミナーでは、これらの状況を踏まえ、「本当に組込みで’使える’モデルとは何か」について具体的な例を交えながら考えていきたいと思います。また、そのために必要なモデリングスキル、さらにはそのベースとなる思考方法、およびその訓練方法などについても、講師のこれまでの経験を元に紹介いたします。
資料: 『組込みで’使える’UMLモデルとは』
(62slides pdf形式 1.5MB)
講演者の都合により、ダウンロード用の資料は講演時のスライドから一部スライドを割愛させていただいております。ご了承ください。
セミナーの様子:
第8回モデリング技術セミナーの様子

第8回UMTPモデリング技術ワークショップ実施報告

日時: 2010年2月5日(金) 15:30〜17:30
場所: 株式会社豆蔵 新宿三井ビルディング34F 会議室
座長: 日本ユニシス株式会社 第二企画部 担当部長 水戸一幸氏
参加者: 11名、
渡辺博之氏(エクスモーション)、芳村美紀氏(エクスモーション)、小黒登行氏(豆蔵)、河合昭男氏(オブジェクトデザイン研究所)、竹政昭利氏(オージス総研)、中原俊政氏(バブ日立ソフト)、羽生田栄一(豆蔵)、皆川誠氏(豆蔵)、山海一剛氏(オージス総研)、山城明宏氏(東芝ソリューション)、越智典子氏(技術翻訳)
概要: ・イントロダクション
・講演内容に関する確認
・現状のモデリング技術の問題点
・モデリング原論
-モデリングの方法論
-モデリング原理、原則、パターン
・プロセスとモデリング
-要求のモデリング
-分析と設計の関係
-アーキテクチャ設計のモデリング
・さまざまな技術とモデリングの関係
・モデリングを普及させるには
・今後のモデリング
・参考文献
資料: 議論詳細(第8回UMTPモデリング技術ワークショップ誌上公開のページにリンク)
ワークショップの様子:
第8回モデリングワークショップの様子

ワークショップの終了後、講師を囲んで撮ったスナップショットです。

第8回モデリング技術ワークショップ

向かって左から順番に、
後列:小黒、皆川、河合、中原、羽生田、竹政 、
前列:水戸、渡辺、芳村、山城、(敬称略)