第3回UMTPモデリング技術セミナーとワークショップの実施報告

第3回UMTPモデリング技術セミナーは、浅海智晴事務所の浅海智晴氏を迎え、自らのソフトウェア開発および教育実績に基づくオブジェクトモデリング手法について講演していただきました。講師は、業界ではXML/Javaの分野で有名であり、XML/Javaスキーマコンパイラ(RELAXER)やXML文書処理システム(SmartSeries)の開発で知られています。また、また日本Javaユーザグループ(JJUG)の副会長も務められています。

講師自身が、初学者にモデリング技術を教えようとしたときに、モデリングについて体系的にまとめられているよい参考書がないために、自身で書籍を執筆されたと述べている通り、講師が今年執筆された2冊の書籍(下記のセミナー実施報告を参照)には、モデリングの考え方からその進め方や各段階で必要な技術が体系的にまとめられています。

今回のセミナーでは、講師のモデリングへの想いと共に、仕組み(考え方)や仕掛け(ツール)を含めた問題分析から実装までの一貫した方法論のエッセンスを紹介していただきました。今回の参加者は、37名の参加者のほぼ全員がモデリング技能認定試験L2以上を取得のモデリング実践者でした。

セミナーは、クラウド時代のソフトウェア開発、という切り口から始まりました。
講師は、システムの製造や作成されたシステムを保守・運用する環境の多くはクラウドに飲み込まれてしまう(クラウドの向こう側のコンポーネントやサービスとして提供される)ので、今後は、業務や方式(アーキテクチャ開発)の分析・設計が重要になってくる、と主張します。

このようなクラウド時代のソフトウェア開発技術として、講師は次の4点が重要であると述べます:

  1. 業務指向であること (アプリケーション構築の力点がより業務側に移ってくるので、業務モデルの構築と、業務モデルからシステム・モデルへの落とし込みがモデリングの論点になる)
  2. コラボレーションを重視すること (これまではクラス図中心だが、これからは動的モデルが重要)
  3. モデル駆動開発であること (並列・分散をプログラミングすることは大変困難なので、できるだけ業務に近いモデルからプログラムを自動生成できるとよい)
  4. CBD(Component-Based Development)の活用 (コンポーネントベース開発の定着を阻害要因がなくなりつつあるので、コンポーネントの活用を前提にした開発が可能)

講演では、これらの技術を活用したモデリング手法SimpleModelingについて紹介いただきました。

内容は示唆に富み、聴講者を惹きつけながら、あっという間の1時間半の講演でした。

しばしの休憩を挟んでセミナーに続て行われたワークショップでも、講師とモデリング技術部会のメンバと活発な議論が行われ、これから「モデリング」を考えていく上での対象の見方や「モデリング」そのものの考え方について、有益な議論ができました。

セミナーに参加した聴講者にも、またその後引き続き議論に参加したモデリング技術部会のメンバにとっても、大変有意義なものとなりました。講師の浅海様、そしてセミナーを盛り上げてくれた参加者の皆様、どうもありがとうございました。

 

第3回UMTPモデリング技術セミナー「SimpleModelingとSimpleModeler」実施報告

日時: 2008年11月14日(金) 13:30〜15:00
場所: オージス総研 東京オフィス 8F Georgia
講師: 有限会社 浅海智晴事務所代表 日本Javaユーザグループ副会長 浅海智晴 氏
参加者: 37名
概要: SimpleModelingは講師が開発したソフトウェア開発者教育、中小規模企業システム開発向けのモデリング手法です。(講師著「上流工程UMLモデリング」「マインドマップではじめるモデリング講座」)
SimpleModelingにはもう一つモデル駆動開発というターゲットがあります。
モデル駆動開発を行うためには、モデル駆動開発をターゲットにしたモデリング手法に加えて、モデルの記述言語とモデル変換を行うモデル・コンパイラが必要となります。この目的で開発中のツールがSimpleModelerです。SimpleModelerは、Scalaをメタ言語として定義したSimpleModeling用DSLから各種成果物の生成を行います。
本講演ではSimpleModelingとSimpleModelerを素材に、(1)「ソフトウェア開発者教育とオブジェクト・モデリング手法」と(2)「モデル駆動開発におけるDSLとオブジェクト・モデリング手法」の2つのテーマについて考えます。
資料: 「SimpleModelingとSimpleModeler
モデル駆動開発をターゲットにしたオブジェクト・モデリング手法とScala DSLによるモデル・コンパイラ」
(90slides pdf形式 1.21MB)
セミナーの様子:
第3回モデリング技術セミナーの様子

 

第3回UMTPモデリング技術ワークショップ実施報告

 

日時: 2008年11月14日(金) 15:10〜18:30
場所: オージス総研 東京オフィス 8F Georgia
座長: 富士通株式会社 ソフトウェア事業本部 主席部長 吉田裕之 氏
参加者: 14名、
浅海智晴氏(浅海智晴事務所)、アジェイ・クマルミスラ氏(豆蔵)、猪股 順二氏(富士通)、河合昭男氏(オブジェクトデザイン研究所)、竹政昭利氏(オージス総研)、照井康真氏(テクノロジックアート)、中原俊政氏(バブ日立ソフト)、羽生田栄一氏(豆蔵)、藤井 拓氏(オージス総研)、森 未英氏(TIS)、山下智也氏(テクノロジックアート)、山城明宏氏(東芝ソリューション)、吉田裕之氏(富士通)、越智典子氏(技術翻訳)
概要: ・ワークショップの趣旨と講師の自己紹介
・講演内容についての質疑
・講師とモデリング
・モデリング原論
・要求と分析と設計の関係
・さまざまな技術とモデリングの関係
・プロセスとモデリングモデリングを普及させるための教育
・今後のモデリング
・参考文献
資料: 議論詳細(第3回UMTPモデリング技術ワークショップ誌上公開のページにリンク)
ワークショップの様子:
第3回モデリングワークショップの様子

ワークショップの終了後、講師を囲んで撮ったスナップショットです。

第3回モデリング技術ワークショップ

後列、向かって左から順番に、河合、竹政、照井、羽生田、アジェイ、中原、山下、越智
前列、向かって左から順番に、藤井、山城、浅海、吉田、猪股、森。(敬称略)